最近、毎年のように起こる大雨や台風。
こうした災害による冠水時に水の中を歩いて避難しなければならない時、どんな履物が適しているのでしょう。
今回は、冠水時の避難に適した履物を選び方や注意点とともに紹介します。
ニュースやネットでよく見かける、「冠水時の避難に長靴はNG」といわれている理由や、避難時に使える履物グッズも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
冠水時避難するための履物とは
冠水した道路を安全に避難するのに適した履物は、水の中でも滑りにくい事はもちろんのこと、脱げにくく、また足の裏を怪我から守ってくれる靴です。
このような条件を全て満たした履物としておすすめなのは、工事用の安全靴です。
工事用の安全靴は強度や耐久性に優れており、滑らない、脱げないなどの安全性を重視した作りになっています。
また、災害時の水は濁っていることが多く、水中に割れたガラスや尖ったクギ、ガレキなどが流れていても気がつきにくい状況です。
安全靴は、そうした危険物を知らずに踏んでしまった場合でも靴底が破れることなく、足を守ってくれます。
ただ、「安全靴は靴の先に堅い芯が入っている靴のこと」と思われている方も多いようですが、実は、それだけでは安全とはいえません。
ここからは、冠水時にも安心して避難するための安全靴の選び方について、詳しく見ていきましょう。
「安全靴」の選び方
安全靴は、軽量で通気性の良いメッシュ素材のものやおしゃれなデザインのものなど様々な種類のものが販売されており、どれを選べばいいのか迷ってしまうほどです。
その中から冠水時の避難に適した安全靴を選ぶためには、以下の3つのポイントを押さえる事が大切です。
靴選びに失敗しないためにも、確認しておきましょう。
①底に滑り止めがあるもの
濡れた地面は想像以上に滑りやすく、転倒する恐れもあります。
そのため安全靴は、靴底に凹凸の入った滑り止めがあるものを選びましょう。
滑り止め機能が備わっている靴には、靴底についての説明部分に「耐滑」という表記があります。
「耐滑」と表記されている安全靴は靴底の摩擦力に優れており、滑り止め性能が高い靴です。
水中を避難する場合は、「耐滑」と明記されている安全靴が最適です。
②紐で足と靴を固定できるもの
安全靴には、紐タイプやマジックテープタイプなどさまざまな種類があります。
冠水時の避難に適している安全靴は、紐タイプです。
マジックテープタイプの安全靴は着脱がしやすく便利な反面、水の中では水圧などでマジックテープの部分が簡単に剥がれてしまいます。
いっぽう紐タイプの安全靴は、靴紐を自分で調整できるため足のサイズにピッタリ合わせやすく、足と靴を固定できるという特徴があります。
水の中は、水流や水圧で靴が脱げやすい状態です。
そのため、安全靴は紐タイプの自分の足のサイズに合わせてしっかりと結べる、脱げにくいものを選びましょう。
③JISマークのあるもの
安全靴はおもに、「JISマーク」入りと「JSAAマーク」入りの2種類があります。
このうち、冠水時の避難に適しているのは「JISマーク」入りの安全靴です。
「JISマーク」とは、JIS(日本工業規格)によって定められた国家規格で、定められた一定の基準に合格した安全靴に付いているマークです。
いっぽうの「JSAAマーク」とは、公益社団法人日本保安用品協会(非営利法人)によって定められた基準に合格した安全靴に付いています。
どちらも、「耐圧迫性」「耐衝撃性」「表底のはく離抵抗」などの安全基準が定められている点は同じですが、その基準値はJISの方が高く設定されています。
さらにJIS合格品とJSAA合格品には、素材にも大きな違いがあります。
それぞれの素材を比較すると、JISマーク入りは革製や総ゴム製に限られており、JSAAマーク入りは 人工皮革や合成皮革などが多く使用されています。
このように、JIS合格品の安全靴の方がより厳しい基準値をクリアした、安全で耐久性の高い靴となります。
JISマークのあるものなら一定基準以上の安全性が証明されているため、冠水時の避難には、ぜひ「JISマーク」入りの安全靴を選びましょう。
冠水時の履物における注意点
水中を避難する際には、水に強いまたは濡れても大丈夫な履物を選びがちです。
しかし、そういった履物でも冠水時には危険を伴う場合があるため注意が必要です。
ここからは、冠水時の履物における注意点について紹介します。
①長靴は避難時に適さない
水に強い長靴ですが、冠水時の避難には適していません。
冠水時は水が濁っていて水中の様子が分かりづらくなっているため、避難している途中で知らずに深みにはまってしまい、泥水が長靴に侵入する危険性があります。
さらに水害時に急に水かさが増し、膝下までの高さしかない長靴が水没してしまう場合もあります。
水が入ると長靴は急に重くなり歩きにくくなります。
最悪、水の中で足を取られて転倒してしまったり長靴が脱げてしまう恐れもあります。
そのため、冠水時には安易に長靴で避難しないようにしましょう。
②ウォーターシューズも適さない
水辺で遊ぶためのウォーターシューズも、水害時に避難するための履き物としては不向きです。
ウォーターシューズは足へのフィット感がある反面、靴底は薄く設計されているのが特徴です。
冠水時に避難する際にウォーターシューズでガラスの破片や尖った石などを踏めば、靴底が簡単に破れて大怪我をする恐れがあります。
③サイズが合っているものを選ぶ
水害で避難する際には、自分の足のサイズに合ったものを選ぶことも大切です。
水中はただでさえ歩きにくい上、サイズの合わない靴では思うように歩くことができません。
サイズが合わない靴を履いて水の中を無理に歩けば、靴ずれや怪我など足を痛める原因になります。
また、靴が水中で脱げてしまうこともあります。
冠水時の避難には特に動きやすさが重要ですので、必ず自分の足のサイズに合った靴を選びましょう。
また、安全靴を日頃から履いてみて足に馴染ませておくことも大切です。
避難時に使える履物グッズ
備えのためとはいえ、家族の人数分の安全靴を用意するのは費用もかかるし場所もかさみます。
そんな時に使える、避難用の履物グッズを紹介します。
セーフティーインソール
セーフティーインソールは、釘やガラス片などを踏んでしまった場合でも、靴底からの貫通を防ぎ足を怪我から守るための靴の中敷きです。
セーフティーインソールは、普段使っているスニーカーや長靴などにそのまま使用することができます。
セーフティーインソールの素材には、ステンレスの薄い鋼板のものや軽くて強度のある樹脂製のものなどがあります。
男性用だけではなく女性やお子さんも使えるよう、種類やサイズも豊富に揃っています。
セーフティーインソールは使用方法も簡単で、そのうえ場所を取らないため、ご家族全員分を備えやすいのがメリットです。
強力ガムテープ
冠水時にいざ避難しようという時、履くものが長靴しかないという場合に役に立つのが強力ガムテープです。
強力ガムテープで長靴の履き口をしっかり止めれば、長靴への浸水を軽減することができます。
さらに長靴が脱げにくくもなるため、水中を安全に移動するのに役立ちます。
まとめ
冠水時の避難に適した履物は、水中でも滑りにくく脱げにくい、さらに足の裏を怪我から守ってくれる工事用の安全靴です。
安全靴は、靴底に滑り止めがあるもの、また足と靴をしっかりと固定できる紐タイプのものを選びましょう。
さらにJISマーク入りの安全靴なら、一定基準以上の安全性が証明されているため安心して備えておくことができます。
長靴やウォーターシューズは水には強いのですが、冠水時に避難する履物としては適切ではありません。
なお、避難時に使える履物グッズとして、「セーフティーインソール」と「強力ガムテープ」を紹介しました。
冠水時の避難に適した履物をお探しの際は、ぜひご参考にされてください。
必要な靴や備品などの防災グッズを用意したら、日頃から目の届くところに置いておくと、いざという時にすぐに使えて安心ですね。